2026年2月25日水曜日

変分法をクーラント・ヒルベルト「数理物理学の方法」から学ぶ

《はじめに》
《最小作用の原理》
 力学の本質は最小作用(ハミルトンの原理)の原理に帰着する。
 ランダウリフシッツの「力学」では、
ラグランジアンを使用して、
『作用積分が最少(あるいは停留)となるような軌跡が、実際に自然界が選択する運動である』
といういわゆる「最小作用の原理」(または作用の停留原理)を出発点としている。
 ランダウの立場では、「最小作用の原理」を出発点としていることが、理論的な特徴である。
『自然界の運動は、ある関数(ラグランジアン)を時間で積分した量(作用)を最少にするように決まる。』
ランダウの「力学」には、上記を、ある意味「公理的に採用している」という特徴がある。

 以下で、その最小作用の原理(ハミルトンの原理)の数学的基礎である変分法を、
クーラント・ヒルベルト「数理物理学の方法 1」
https://tinyurl.com/57fpzn4p
の第4章 変分法の基本事項
から、学んで行く。

《物理法則の形式》のサイトから:
 物理学の法則は幾つかの形式に分類される.
 一つは「微分形式」と呼ばれるものであり,ある瞬間の状態からスタートして微小な時間経過の後に状態がどのように変化するかを記述するやり方である.あるいは,ある一点の状態から微小な距離だけ離れたところでは状態がどのように変化するか,というのを記述する場合もそうである.ニュートンの運動方程式や,電磁気のマクスウェル方程式など,多くの法則がこの形式で書かれている.

 微分形式で書かれた法則を使う場合,その積み重ねを適用することで全体を把握することになる.微分方程式を解くことで質点の軌道を表す式を求めたりするわけだ.

 この他に「積分形式」で法則を記述する方法がある.これは部分にはこだわらずに,全体として見た場合にどんなことが成り立っているかを書き下すやり方である.エネルギー保存則や,電磁気学に出てくる積分形のガウスの法則などがこれに当たる.

 ところが,これらとは全く違う記述方法がある.この方法では,初めに初状態と終状態を指定しておく.すると,その途中でどのような経過を取りつつ終状態へ達するのかという道筋は無数に考えられそうなのだが,その中で実際に実現可能なもの,すなわち現実に自然が選ぶのはどういう条件を満たす経路だろうか,ということを考えるのである.その条件を指定することで法則を記述する.明らかに前の 2 つとは考え方が異なっている.

 その時使う方法が「変分原理」と呼ばれるものである。あるいは「最小作用の原理」(ハミルトンの原理)と呼ばれる。

《ベルヌーイの問題提起》のサイト:
「質点がある点 A からスタートして滑らかな斜面を転がり落ちるとき,最短時間で別の点 B まで辿り着くには斜面をどのような形にしたら良いだろうか.」

この問題の解き方
 この斜面の曲線を関数f(x)で表す。そして、質点がこの斜面を転がり終えるのにかかる全時間を以下のように求める。すなわち、落下距離からエネルギー保存則を使って速度が求められる。そして、斜面の傾きからその水平速度が求められる。その水平速度から、水平方向の微小距離dxだけ進む間にかかる時間が求められる。これを水平方向の移動距離の全体に渡って積分する。

ただし簡単になるように下向きを正とし,スタート地点 A でのx座標を 0 としてある。

 凡人はここで行き詰まる.なぜって,時間tを最低にするような関数fの形を求めたいにもかかわらず何を変数にして最低値を求めてやればいいか分からないからである.ここで発想の飛躍が必要とされる.「変分法」と呼ばれるアイデアを使うのだ.

 それは次のような考え方をする.いきなりだが,答えとなる「最速降下線」が見つかったとする.当然のことだが,この軌道をほんの少しだけずらしたらそれは最速降下線ではなくなるだろう.どのようなずらし方をしてもそのようなことになる.

 そこで,軌道をずらした度合いを横軸にとって,軌道を駆け抜けるのにかかる時間tを縦軸にとってグラフにしてやると,正しい解を与えるところではこのグラフは最低値をとり,この点でのグラフの傾きは 0 になるわけだ.何だかだんだん解けそうな気がしてきただろう?

 この正しい軌道からのごく僅かのずれをδf(x)と表すことにしよう.これはxについての関数であって,スタート地点 A とゴール地点 B の条件を変えないようにδf(A)=δf(B)=0としておかなければならない.この軌道のわずかなずれδf(x)を「変分」と呼ぶ.

 そして軌道を表す関数f(x)がf(x)+δf(x)になった場合に,降下時間tがどれだけ変化するかを計算してやるのだ.先ほどのグラフの理屈を使えば,降下時間tが最短になる場合にはコースをごく僅かδfだけ動かしても降下時間の変化δtはδfに比較して 0 と見なせる程度にとどまるはずである!グラフの傾きが 0 だというのはそういう意味だ.このことを数式では次のように表す.

これが成り立つところが解になっているということである.普通の微分によく似た話だろう?
・・・

クーラント・ヒルベルト「数理物理学の方法」
第4章 変分法の基本事項

1節 変分法の問題
1.関数の最大,最小
 変分法の出発点となるのは、普通の最大、最小問題の一般化である。この一般化の本質をより深く理解するために、既知の初等的理論をふりかえってみる。そこで取り扱われることは、与えられた閉領域G内を変化する変数x,y,・・・の与えられた連続関数f(x,y,…)が最大または最小、すなわち、x0,y0,・・・に十分近いG内のすべての点に対して《極値》となるような点x0,y0,・・・を求めることである。



【リンク】
「高校物理の目次」