「高校物理の発想の基本」
「ベクトルに、常にそのベクトルの方向に垂直な微少ベクトルを加え続けて積分すると、
ベクトルの方向が変わるが、ベクトルの大きさは変わらない」という定理があります。
その定理の結果、ひもを押し当てる曲面がひもに摩擦力を加えないならば、
その曲面の形がどのような場合でも、その曲面で曲げられるひもは、どの部分でも張力が同じ値になります。
この定理の証明は簡単ではありませんが、試験問題を解く場合の前提知識として知っておいた方が良いと思います。
そのため、この定理を以下で導出します。
例えば上図のように、ひもの左側の張力がF0である場合に、このひもが曲面で角度2θだけ曲げられる場合を考える。
このひもには、曲面からひもの張力の方向に垂直な方向に加わる抗力F1、F2、F3が加えられるものとします。この力は無限に細かく分解して各細部に加わりますが、無限に細かくするのが大変なので、力を3つだけに分解して図に示しました。
そうすると、ひもが張力で左側に引っ張られる力F0(力の絶対値をf0とする)と、右側に引っ張られる力Fn(力の絶対値をfnとする)と、曲面からひもに加わる力とが釣り合う条件が式1であらわせます。
この式1で、曲面からひもに加わる力は、3つに分解して考えますが、そのように3つに分解した各力の絶対値はf1で値が等しいものとします。ただし、その3つの力の方向は、場所により微妙に異なります。
この各力は、以下の式であらわせます。
この各力の式を式1に代入して以下のように計算すると式2が得られます。そして、その式2から式3と式4が得られます。
この式4を以下のように変形すると式5が得られます。その式5を式3に代入して計算すると、以下の式6が得られます。
この式6から、以下の式7のように、ひもの右側の張力Fnが左側の張力F0と同じ大きさであるという結論が得られます。
これで、定理が導かれました。
なお、この式7を式5に代入すれば、曲面からひもの張力の方向に垂直な方向に加わる抗力F1、F2、F3の大きさをあらわす式8が得られます。
(補足)
上の計算で、曲面からひもに加わる3つの力の絶対値がどれも等しい大きさf1であると(物理問題研究者の都合で)仮定しました。そのように、わからない量については、とりあえず値を仮定してしまい、1つの結論が得られたら、その仮定が無くても同じ結論が得られるか調べていくのが、物理研究のやりかたです。この例の場合では、この3つの力の中央の力の大きさだけが残りの2つの力と大きさが異なるものとして計算しても、やはり、ひもの右側の張力Fnが左側の張力F0と同じ大きさであるという結論が得られます。
(補足2)
上の図を、θが十分小さい角度の場合とし、その場合を1/θ倍連続して行なうことで方向を変える場合を考えます。
そして、θが十分小さい角度の1つの場合の、曲面からひもに加わる抗力のF1とF3の大きさがθの割合で異り、それを1/θ倍連続して行なうことで、曲面からひもに加わる力の大きさが場所によって異なる場合を考えます。
その場合は、1つの図の場合で、f0とfnはθ2程度の割合で異なります(このことを導出する説明は省略します)。しかし、それを1/θ倍連続して行なっても、ひもの左端の張力f0と、1/θ個目の図のひもの右端の張力fnとは、θ2/θ=θ程度の微少量の割合でしか異なりません。
そのため、θを充分小さくした極限では、ひもの左端の張力f0と、1/θ個目の図のひもの右端の張力fnとは同じ値になります。
【リンク】
「高校物理の目次」
「ベクトルに、常にそのベクトルの方向に垂直な微少ベクトルを加え続けて積分すると、
ベクトルの方向が変わるが、ベクトルの大きさは変わらない」という定理があります。
その定理の結果、ひもを押し当てる曲面がひもに摩擦力を加えないならば、
その曲面の形がどのような場合でも、その曲面で曲げられるひもは、どの部分でも張力が同じ値になります。
この定理の証明は簡単ではありませんが、試験問題を解く場合の前提知識として知っておいた方が良いと思います。
そのため、この定理を以下で導出します。
例えば上図のように、ひもの左側の張力がF0である場合に、このひもが曲面で角度2θだけ曲げられる場合を考える。
このひもには、曲面からひもの張力の方向に垂直な方向に加わる抗力F1、F2、F3が加えられるものとします。この力は無限に細かく分解して各細部に加わりますが、無限に細かくするのが大変なので、力を3つだけに分解して図に示しました。
そうすると、ひもが張力で左側に引っ張られる力F0(力の絶対値をf0とする)と、右側に引っ張られる力Fn(力の絶対値をfnとする)と、曲面からひもに加わる力とが釣り合う条件が式1であらわせます。
この式1で、曲面からひもに加わる力は、3つに分解して考えますが、そのように3つに分解した各力の絶対値はf1で値が等しいものとします。ただし、その3つの力の方向は、場所により微妙に異なります。
この各力は、以下の式であらわせます。
この各力の式を式1に代入して以下のように計算すると式2が得られます。そして、その式2から式3と式4が得られます。
この式4を以下のように変形すると式5が得られます。その式5を式3に代入して計算すると、以下の式6が得られます。
この式6から、以下の式7のように、ひもの右側の張力Fnが左側の張力F0と同じ大きさであるという結論が得られます。
これで、定理が導かれました。
なお、この式7を式5に代入すれば、曲面からひもの張力の方向に垂直な方向に加わる抗力F1、F2、F3の大きさをあらわす式8が得られます。
(補足)
上の計算で、曲面からひもに加わる3つの力の絶対値がどれも等しい大きさf1であると(物理問題研究者の都合で)仮定しました。そのように、わからない量については、とりあえず値を仮定してしまい、1つの結論が得られたら、その仮定が無くても同じ結論が得られるか調べていくのが、物理研究のやりかたです。この例の場合では、この3つの力の中央の力の大きさだけが残りの2つの力と大きさが異なるものとして計算しても、やはり、ひもの右側の張力Fnが左側の張力F0と同じ大きさであるという結論が得られます。
(補足2)
上の図を、θが十分小さい角度の場合とし、その場合を1/θ倍連続して行なうことで方向を変える場合を考えます。
そして、θが十分小さい角度の1つの場合の、曲面からひもに加わる抗力のF1とF3の大きさがθの割合で異り、それを1/θ倍連続して行なうことで、曲面からひもに加わる力の大きさが場所によって異なる場合を考えます。
その場合は、1つの図の場合で、f0とfnはθ2程度の割合で異なります(このことを導出する説明は省略します)。しかし、それを1/θ倍連続して行なっても、ひもの左端の張力f0と、1/θ個目の図のひもの右端の張力fnとは、θ2/θ=θ程度の微少量の割合でしか異なりません。
そのため、θを充分小さくした極限では、ひもの左端の張力f0と、1/θ個目の図のひもの右端の張力fnとは同じ値になります。
【リンク】
「高校物理の目次」
0 件のコメント:
コメントを投稿