〔ページ内リンク〕
▷4元グラジエント
▷(1)4次元空間のなかの曲線のうえの積分
▷(2)4次元空間のなかの(2次元)曲面のうえの積分
▷相対論の4次元空間(ミンコフスキー空間)でのホッジの星印作用素の定義
▷(3)4次元空間のなかの超曲面、すなわち、3次元多様体のうえの積分
▷(4)4次元の体積にわたる積分
▷微分形式
▷4次元座標の連続関数に関するガウスの発散定理
▷4次元座標での3次元超曲面での積分を、超曲面を包む2次元面での積分に変換する定理
▷ランダウの「対偶」の定義の修正
【場の古典論】
【第1章】相対性原理
《第6節後段》21p~24p テンソル解析の公式集
この部分を以下で解説するが、このページの最後に記載した、《ランダウの「対偶」の定義の修正》を最初から行って、説明を進めた方が説明がスッキリするので、以下の説明の早い時期に、その定義を修正して説明するようにした。
▷4元グラジエント
▷(1)4次元空間のなかの曲線のうえの積分
▷(2)4次元空間のなかの(2次元)曲面のうえの積分
▷相対論の4次元空間(ミンコフスキー空間)でのホッジの星印作用素の定義
▷(3)4次元空間のなかの超曲面、すなわち、3次元多様体のうえの積分
▷(4)4次元の体積にわたる積分
▷微分形式
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▷4次元座標での3次元超曲面での積分を、超曲面を包む2次元面での積分に変換する定理
▷ランダウの「対偶」の定義の修正
【場の古典論】
【第1章】相対性原理
《第6節後段》21p~24p テンソル解析の公式集
この部分を以下で解説するが、このページの最後に記載した、《ランダウの「対偶」の定義の修正》を最初から行って、説明を進めた方が説明がスッキリするので、以下の説明の早い時期に、その定義を修正して説明するようにした。
〔§6でのテンソル解析の公式集を理解する基礎知識として《微分形式》を学んでおいた方が良いと思う〕
『これから,今まで知っていた代数と少し異なる新しい代数を勉強します.代数とは,乗法の定義されたベクトル空間のことでしたが,これから考える乗法は,既にご存知のベクトルの外積に少し似た乗法です.これを 外積代数 と呼びます.しかし,これから考える乗法はベクトルの外積よりも,もっと一般的なものですので,ひとまずベクトルのことは忘れておくと良いと思います.外積代数はそれ自体でも面白いのですが,微分形式もしくは外微分形式と呼ばれる強力なツールを勉強するための土台になります.(微分形式は,物理や工学などに幅広く応用できる強力な理論です.外積代数だけでは,少し数学的すぎて無味乾燥に感じるかも知れません.)どうしても微分形式を早く勉強したい人は,外積代数カテゴリーの後半の記事は飛ばして先に行っても大丈夫ですが,最低 ホッジ作用素 の記事の内容は押さえておいた方が良いと思います.』
《ポアンカレの補題》任意の次数の微分形式に対し,二回外微分を取ったら零になります.
また、この微分形式の説明を理解する基礎知識として「テンソルの概念の初歩」を学んでおくと良いと思います。
『外積のルール 1 と 2 を持った算法の構造を,外積代数と呼びます.外積代数では,外積の計算を一般の次元でも使えるように少し拡張したウェッジ積という乗法を考えます.』
4次元テンソル解析の微分および積分演算の公式を述べる。
《4元グラジエント》
ローレンツ変換によって各世界点での値が不変なスカラー量である4次元座標に対する連続関数φの4元グラジエントは(共変型の)4元ベクトルである。
実際、スカラーφの微分量dφはスカラーであるが、この量は以下の式のように、この4元グラジエント∂φと(反変型の)4元ベクトルdxi の積であらわされる。そのため、この4元グラジエント∂φが(共変型の)ベクトルであることが確かめられる。
微分演算子∂i は(共変型の)ベクトルとみなせる。そのため、以下の式のような、この演算子∂i と(反変型の)4元ベクトルAi との積はスカラーになる。
《4次元空間での積分の形》
3次元空間では積分は、体積、面積、線分で行なうことができる。4次元空間では、以下の4つの型の積分が可能である。
《(1)4次元空間のなかの曲線のうえの積分》
積分要素は弧長の要素である動径4元ベクトルdxi である。
《(2)4次元空間のなかの(2次元)曲面のうえの積分》
3次元空間のなかの(2次元)曲面のうえの微小面積要素のXY平面への射影の面積ΔSxyは下図のようになる。
そして、3次元空間での立体的な微小面積要素は、3つの座標平面への射影の面積を成分とする3次元のベクトル(ΔSyz,ΔSzx,ΔSxy)=dSm であらわされる。
4次元空間のなかの(2次元)曲面のうえの微小面積要素dfik も、4次元空間での6つの座標平面への射影の面積(6つ)を成分とする6次元のベクトルであらわされる。(2つの基底の組合せ(ei)⊗(ek)であらわす面要素も、ベクトル空間の基底であり、その組合せ基底(ei)⊗(ek)の数がそのベクトル空間の次元である)。第1のベクトルと第2のベクトルの張る面積の、6つの座標平面への射影は以下のように計算できる。例えば、1つの面要素をあらわす複合基底(e1)⊗(e2)の係数は、以下の式で計算できる。単独基底(e1)と(e2)を基底とする第1のベクトルと第2のベクトルをウェッジ積Λで掛け合わせると複合基底(e1)⊗(e2)を基底とする(面をあらわす)ベクトルになる。基底が複合基底であるベクトルをテンソルと呼ぶ。第1と第2のベクトルの順番を逆にしたウェッジ積の符号は逆になる。このように、2つのベクトルのウェッジ積で与えるテンソルは反対称テンソルである。
任意の方向を向いた2つのベクトルのウェッジ積を計算すると、速やかに、6つの座標平面への射影の6つの複合基底(ei)⊗(ek)と係数dfik の積の和であらわすことができる。微小面積要素dfik は反対称テンソルである。なお、ベクトルで注意すべきことは、ベクトルは、基底ei ((ei)⊗(ek)という複合基底を持つベクトルはテンソルと呼ばれる)と係数xi (またはfik )とのセットだということです。
《第1のポイント》
先ず、以下の擬テンソルεについて、添字の上げ下げはテンソルと同様にできる。そのため、以下の式の関係が成り立っている。
《第2のポイント》
次に、ホッジの星印作用素*(定義に注意)に関する以下の式が成り立っている。
また、以下の式の関係が成り立っている。
(注意)なお、ホッジの星印作用素を2重に作用させた場合に、以下の例のように、元の要素の符号が変わってしまい元に戻らない場合がある(いつもそうであるとは限らない)ことに注意。
ランダウの式6.12の記述には、どの項が星印作用素であるかが明示されてない(ホッジの星印作用素の場合は、どの項が星印作用素であるかによって式の符号が逆になる)あいまいさがある。§6の文脈の示唆から式を解釈すると、式6.12は、下記の(6.12)のように星印作用素の項を持った式であると解釈される。
式6.12は、星印作用素との関係があいまいな式である。また、ホッジ双対の写像関係の正しい定義は、同じ上付き記号の微分のウェッジ積であらわした基底の間の関係であるが、ランダウの「対偶」の定義では、ホッジの星印作用素の項の添え字の上付きと下付きを逆に表現していることに注意すべきである。そして、更に式の符号が逆に定義されていると考えられる。
以降の説明をスッキリさせるため、この際に、式6.12の表現を明確に定義する。
このランダウ「対偶」の定義は、以下の定義だと考えるとわかりやすいと思う。
問題を簡単化するために、再度、3次元空間に戻って考える。
3次元空間では、この反対称テンソルdfik のかわりに、以下のように、この反対称テンソルdfik の対偶(ホッジ双対 Hodge)の3次元ベクトルdSm を、エディントンのイプシロンεmik を使って計算して、その対偶(ホッジ双対)ベクトルdSm に微小面積要素を代表させている。
これは、面積要素の法線方向を持つベクトルである。そして、ベクトルdSm の絶対値がこの微小面積要素の面積に等しい。
4次元空間では、テンソルdfik に対してはそういう法線ベクトルを作ることはできないが、4次元用のエディントンのイプシロンεmpik を使って計算して、そのテンソルdfik の対偶(ホッジ双対の定義とは左辺の星印作用素の項の添え字の上下が逆ではあるが)テンソルdf*mp を作ることはできる。
この対偶テンソルdf*mp は、2次形式から 2次形式に写像したホッジ双対なテンソルである。
以降の説明をスッキリさせるため、この際に、誤りを正しておこうと思う。この式6.11の正しい定義は、以下の定義だと考える。
このランダウ「対偶」の定義は、以下の定義だと考えるとわかりやすいと思う。
ホッジの星印作用素の定義は「超簡単!ベクトル解析、他」(神谷幸秀:高エネルギー加速器研究機構)が参考になると思う。 「ホッジの星印作用素は、大雑把に言えば、 k 次の微分形式(の基底)とその微分形式にこの作用素を作用させたものとの外積(wedge積)をとると、最高次の微分形式になるようなものである。(ただし、計量テンソルgik の対角成分がー1になる成分の数(計量を負とする基底の数)が奇数ある場合は、それにー1を掛け算する) 」この定義に従い、星印作用素は3次の微分形式に作用させる場合も、2次の微分形式に作用させるときも、同じεmpik を使った式でなければならない。 ホッジ双対についての、九州大学(吉田茂生)の講義ノート「ベクトルとテンソル」も参考になると思う。
《微分形式の引き戻し》《ホッジの星印作用素》
(ここをクリックした先のサイトも参考になる) 「いままで3次元空間での『ベクトルの外積』として知っていた計算の正体は,『 ベクトルの外積の結果のベクトルdSi を作る元の2つのベクトルの2次元のウェッジ積d(Xk) Λd(Xm) に3次元のホッジの星印作用素を作用させて、(3-2)=1次元のウェッジ積dSiに写像したもの』だったのです.」
4次元の場合では、k個の方向で定義されるk次元の積分範囲の演算子であるk 次元の微分形式(第1の微分形式)と、そのk個の方向に垂直な(4-k)個の方向で定義される(4-k)次元の微分形式(第2の微分形式)をウェッジ積Λで結んだ最高次(4次元)の積分範囲の演算子を考えて、以下のホッジの星印作用素を定義する。
ホッジ双対の写像関係の正しい定義は、同じ上付き記号の微分のウェッジ積であらわした基底の間の関係である。
その定義に従ったホッジの星印作用素*の厳密な定義の式を以下の式であらわす。(相対論の4次元の計量テンソルの4つの対角成分のうちの3つが、g11=g22=g33=-1なので、定義の式にマイナス符号が付く)。その厳密な定義の式に従ってウェッジ積Λを使った微分形式で書くと式が分かりやすくなると思う。
《相対論の4次元空間(ミンコフスキー空間)でのホッジの星印作用素の定義》
以下の関係式を成り立たせるホッジの星印作用素を定義する。
そのために、ホッジの星印作用素を以下の式で定義する。
(注意)ランダウの§6の「対偶」の定義は、ホッジの星印作用素の項の添え字の上付きと下付きを逆に表現しているので、ランダウの対偶の定義を具体的にリストアップすると、以下の関係が成り立つ。
ホッジの星印作用素を2重に作用させた場合に、元の要素の符号が変わってしまい元に戻らない場合がある。ランダウが§6で定義する「対偶」(定義を正しく修正したもの)でも、2重に作用させた場合に元に戻らない場合がある。
《以下は、ランダウの「対偶」の演算のリストである》
微小面積要素をあらわすテンソルの6つの基底が6次元ベクトルを構成する。ホッジ双対(Hodge)(対偶)な面積要素df*mp のベクトルは、面積要素dfik の6次元ベクトルに垂直な6次元ベクトルであらわされる。 この微小面積要素のホッジ双対(対偶)への変換操作は、1つの選択肢としては、以下の座標変換を行なうことによって実現できる。
この座標変換を対偶の具体的変換として行なうならば、全てのベクトルが、それに垂直なベクトルに変換される。 微小面積要素の対偶の要素を作る具体的座標変換の選択肢がその他にも種々考えられるが、いずれの座標変換でも、全てのベクトルが、それに垂直なベクトルに変換されると思う。
対偶(ホッジ双対)を作る座標変換にどの選択肢を選ぶ場合でも、面要素dfik 上の線分の方向は、その面要素のホッジ双対な面要素df*mp 上の線分に垂直であることを、以下で考察する。先ず、(X,Y,Z,W)の4次元における面要素の方向は、XY平面、XZ平面、YZ平面、XW平面、YW平面、ZW平面との6つがあるので、面要素の方向をあらわす反対称テンソルdfik の成分の集合は6次元ベクトルであらわされる。元の面要素dfik が6次元ベクトルの1つの成分のみであらわされるように、その面要素がX軸とY軸が張るXY平面に平行になるようにXYZW座標軸を定めてベクトルの基底(基底とする面要素の方向)を対角化する。
XY平面に平行な面要素dfxy のホッジ双対な面要素df*mp が、エディントンのイプシロンεmpik を使ってあらわされると、その面要素df*mk はX軸にもY軸にも垂直な2つの軸のZ軸とW軸の張るZW平面に平行な面要素df*zw になる。(XY平面に平行な面要素dfxy に垂直な5つの平面の、XZ平面、YZ平面、XW平面、YW平面、ZW平面、のうちの1つのみが選ばれる)。
(1)面要素dfxy と面要素df*zw は互いに垂直であるため、面要素dfik をあらわす(6つの平面を成分とする)6次元ベクトルと、ホッジ双対な面要素df*mk をあらわす6次元ベクトルの内積は0になる。
(2)しかも、それだけでは無く、面要素dfik を張るXY軸のいずれにも垂直な軸がホッジ双対な要素の軸として選ばれる。3次元空間では、それはZ軸1つだけであったが、4次元空間では、それにはZ軸とW軸との2つの軸がある。その2つの軸で張るZW平面が、ホッジ双対な面要素df*mk の面になる。そのように、ホッジ双対では、元の面要素のうえのどの線分にも垂直(それが含む全ての線分が垂直)な軸で構成される面要素df*mk を選ぶのである。
実際、以下の計算によって、面要素のテンソル(6次元ベクトル)同士の内積を計算すると値が0になる。
ここで、以下の、反対称テンソルと対称テンソルの積が0になる公式を利用して計算する。
この公式を使って、以下で、面要素のテンソル(6次元ベクトル)同士の内積を計算する。
このように、内積の値が0になる。内積が0になるため、元の面要素dfik と、ホッジ双対な面要素df*mk が、少なくとも互いに垂直であることがわかる。しかも、それだけでは無く、面要素dfik のうえのどの線分も、ホッジ双対な面要素のうえの任意の線分に垂直になる。
ちなみに、平行四辺形の面要素dfik の面積は、その面要素を張る2つのベクトルの長さの積と、その2つのベクトルの間の角度θの正弦 sinθとの積であらわされる。それ以外のその面積の計算方法としては、以下のように、面要素dfik 同士の内積でも計算できる。ただし、その内積は、法線が表面側と裏面側の面を数えるので面積が2重に足される計算になるので、面要素dfik の面積の2乗の2倍になることに注意する必要がある。
以上の計算の最後の段階での、4元ベクトルdrの2乗や4元ベクトルduの2乗の項は、相対論的4次元空間における共変型4元ベクトルと反変型4元ベクトルの内積としてのベクトルの2乗(ローレンツ変換によって変わらない不変量)をあらわしていると解釈して欲しい。すなわち、以上の計算は、4元ベクトルdrと4元ベクトルduの張る微小面積要素の相対論的な2乗の値としての(ローレンツ変換によって変わらない)スカラー値を計算している。
《(3)4次元空間のなかの超曲面、すなわち、3次元多様体のうえの積分》
3次元空間でも、4次元空間でも、3つのベクトルの張る平行6面体の体積は、2つのベクトルの張る面積に、その面に垂直方向の、3つ目のベクトルの高さの積で与えられる。3次元空間では、その体積は、3つの3次元ベクトルの成分から作られる3行3列の行列式に等しい。(行列式の値は正にも負にもなり得ることに注意)。4次元空間では、超曲面に平行で互いに直交する3つの基底ベクトルXk ,Xm ,Xp への、微小体積要素を張る3つのベクトルからの射影(1つのベクトル毎に3つの基底への射影の3つの成分)を求める。そして、その射影の成分から作られる3行3列の行列式が微小体積要素の体積をあらわす。3つの基底ベクトルを基準にした体積(超面積)なので、その行列式の体積をdSkmp というテンソルであらわす。特に超曲面上の積分要素としては、テンソルdSkmp にホッジ双対な4元ベクトルdSi を使うのが便利である。
以下で4元ベクトルdSi を計算する。dSi はランダウの表現を用い、ホッジの星形作用素の添え字の上付きと下付きを逆に表現する。6節の式6.12の定義は正しく修正した定義に従う。
ここで、dSkmp は、k方向の4元ベクトルとm方向の4元ベクトルとp方向の4元ベクトルの張る各方向に作用する体積を行列式であらわすので、添え字k,m,pを入れ替えると体積の値の正負が逆転する。そういうクセのあるものを積分の演算子として使う。そのdSkmp という積分の演算子を、各方向毎の積分の演算子をウェッジ積Λでつないであらわした3方向での積分の演算子であらわすことにする。dSkmp の持つ、添え字の入れ替えで正負が逆転する性質、と同じ性質を持たせるために、ウェッジ積でつないだ演算子の列d(xk) Λd(xm) Λd(xp) は、積の順序を入れ替えるとマイナス符号が付く。
微小体積要素のテンソルdSkmp にホッジ双対な4元ベクトルdSi の方向は、微小体積要素の積分の各演算子のあらわす積分方向のk軸m軸p軸の各方向に垂直である。積分演算のテンソルdSkmp の面上の全ての直線の方向は、i 軸に垂直である。
ここで、基準軸i ,軸k ,軸m ,軸p であらわした超曲面のテンソル及び4元ベクトルの成分を、基準軸WXYZ軸でのテンソル成分およびベクトル成分に書き直して考える。そのように基準軸を変えて書き直したテンソルの成分と4元ベクトルの成分の間でも上の式(6.12)が成り立つ。基準軸の変更によって4元ベクトルdSi はW軸X軸Y軸Z軸へ射影した成分のdS0 ,dS1 ,dS2 ,dS3 であらわされる。超平面の微小超面積要素をあらわすテンソルの成分も、その微小超面積要素のXYZ超平面への射影、WXY超平面への射影、WYZ超平面への射影、WZX超平面への射影の成分に書き直される。それらのWXYZ軸を基準にした4元ベクトルやテンソルの成分は、以下のようにあらわされる。
幾何学的には、この4元ベクトルdSi の絶対値は超曲面要素の"面積"に等しく、方向はこの超曲面要素を張る3つの座標軸に垂直な法線方向に一致する。dS0=dxdydzは、明らかにX軸とY軸とZ軸が張る超平面の法線方向のW軸(ct軸)への、4元ベクトルdSi の射影に等しい。
《相対論的4元ベクトルが問題を難しくしている》
相対論的4元ベクトルが4次元ベクトルとテンソルの計算を難しくしていることを注意しておく。相対論的な4元ベクトルとテンソルの扱いは、単純な4次元空間のベクトルおよびテンソルと扱いが異なる。先ず、ベクトルの長さの2乗の計算が異なる。しかしながら、両者とも同じく、微小体積要素をあらわすテンソルdSkmp は反対称テンソルである。
《(4)4次元の体積にわたる積分》
積分要素は4次元体積要素である。
この要素の値はローレンツ変換によって変わらないスカラーである。4次元空間のある部分の体積は、座標軸の回転変換およびローレンツ変換(これも広い意味での座標軸の回転変換の一種である)に対して不変である。
ただし、詳しくは、下図のように、4次元空間で4つの4元ベクトルri ,uk ,bm ,hp が張る微小体積は、以下の式のように、反対称テンソルのエディントンのイプシロンを使った4行4列の行列式で体積の値が計算される。その微小体積の値は座標の置き換えによって値が変る偽スカラーである。
《微分形式の目次》《微分形式》 《多様体上の1次微分形式》《多様体上の微分形式とその外微分》《微分形式のいくつかの性質》《境界付き多様体とStokesの定理》
(ここをクリックした先のサイトも参考になる)
ここで、積分のための座標の微小量dX0 =cdtや、dX1 =dxやdX2=dyやdX3 =dzを、微小な積分の体積部分dSkmp が行列式であらわされることに対応させ、微小体積部分の各方向のベクトルに対応する積分の演算子にする。異なる座標の方向のこれらの積分の演算子を外積で組み合わせた複数次元での積分演算子を作る。すなわちdSkmp に対応する複数次元での積分演算子を、各座標方向の積分演算子をくさび積Λ(wedge積)で結んだ微分形式であらわす。
そのくさび積の演算子の列(微分形式)があらわす微小な複数次元の面積(あるいは体積)は、正の数で把握される積分範囲の微小面積に対する比が±1になる。くさび積があらわす微小面積の値が、積分の正の値の微小領域に対する比が1であったり、(-1)であったりする。その面積の値の比が±1で変動するのを打ち消すように値が正と負になるように微分形式の値を定める。そうすると、以下の関係がある。
《4次元座標の連続関数に関するガウスの発散定理》
3次元空間でのガウスの発散定理は以下の式の定理であった。
左右の辺を移項して書くと以下の式であらわせる。
体積を包む閉じた曲面のうえの積分を、積分要素dSi を以下の演算子でおきかえることによって、その曲面に包まれる体積についての積分に転換する定理である。
この定理を参考にして、それを4次元空間に拡張した積分を以下のように計算する。先ず、微小超曲面のウェッジ積にホッジ双対な4元ベクトルdSi の方向を、4次元体積の領域を包む4次元超曲面の外側に向けて積分する。また、ウェッジ積が積分要素の積の順序の入れ替えによって値の符号を変える反対称テンソルであること、4次元体積要素をあらわすウェッジ積の符号に注意しつつ計算する。
以上の計算をまとめると、以下の結論になる。
このように、4次元の体積を包む閉じた超曲面のうえの積分を、積分要素dSi を以下の演算子でおきかえることによって、その超曲面に包まれる4次元体積についての積分に転換できる。
ここでの4次元の体積での積分は、5次元以上の空間内で凹凸がある4次元空間を体積積分しているわけではない。凹凸が無い平坦な4次元空間での体積積分である。そのため、次に説明する4次元空間内で凹凸のある超曲面での積分の場合とは異なり、例えば32節で4次元空間でテンソルを積分する場合へ定理を適用する場合であっても、そのテンソルが反対称テンソルに限定されるという制約も無い。この定理は、反対称テンソルの使用に限定される微分形式の定理よりも緩い条件で適用できる定理である。
《4次元座標での3次元超曲面での積分を、超曲面を包む2次元面での積分に変換する定理》
式6.17に係る定理で用いるホッジ星印作用素*は以下のように定義される。
以下の計算によって、反対称テンソルAik に関する式6.17の定理を導き出す。ただし、式6.11の「対偶」の元の定義使うと、式6.17とは符号が異なる解が得られる。式6.17が符号が異ならずに成り立つために、式6.11の「対偶」の定義を修正した定義を使って計算する。
すなわち、x1方向の境界点を含む(dx2)(dx3)面で境界積分する。
(注意)この式の最後の行では、4次元超曲面(3次元体積)dS0 を包む2次元面df*01 での積分の式という積分の形になる。その積分は、4次元超曲面(3次元体積)dS0 を包む全ての面での積分では無い。X1方向に垂直な面の面の方向での2次元面df*01 の面(dX2, dX3の張る面=dX0 に垂直、かつ、dX1 に垂直な面)の方向だけで包む2次元面での積分である。
すなわち、x0 軸方向に垂直である4次元超曲面d(S0) の全表面のうちの一部だけを包む(d(X1),d(X2) の張る面の側は包まず、d(X1),d(X3)の張る面の側も包まない)2次元面での積分をあらわしている。(参考ページが、ここをクリックした先にある)4次元的超曲面(3次元体積)での積分を、その4次元的超曲面(3次元体積)の端の超境界線(2次元面)での超線積分(2次元面積分)に変換する境界の位置の具体例がここをクリックした先にある。
すなわち、x2方向の境界点を含む(dx3)(dx1)面で境界積分する。
すなわち、x3方向の境界点を含む(dx1)(dx2)面で境界積分する。
以上の3つをまとめると、反対称テンソルAik に関するdS0による積分の公式(h=0の場合の、以下で与える公式(1)および公式(2))になる。その公式は、ベクトルA0kに関する3次元空間でのガウスの発散定理と同じ定理になる。この公式を理解するためには、ホッジの星印作用素の式を含む一連の式は無くても良い。
例えば、以下のように公式を把握した方が良い。
次の場合の積分の計算を続ける。
すなわち、x2方向の境界点を含む(dx0)(dx3)面で境界積分する。
すなわち、x3方向の境界点を含む(dx2)(dx0)面で境界積分する。
すなわち、x3方向の境界点を含む(dx0)(dx1)面で境界積分する。
以上の計算をまとめると、h=0,1,2,3 の4つのhの1つずつに成り立つ以下の各式(hを1つの値に固定した1つ式が、hの値に応じて4つある)であらわされる公式が成り立つ。
(注意はじめ)
この最後の式では、公式(1)と公式(2)との2つの積分の右辺の和を2で割った公式にした。df*kh という面積分は、k方向とh方向とに垂直な他の2つの方向のベクトルが張る面で積分する。その積分面は、d(Sh) という超曲面に垂直な2次元面であって、更に、その超曲面内から超曲面の境界を横断するk方向にも垂直な2次元面であって、かつ、超曲面の、任意のk方向の端の境界点を含む2次元面で積分することを意味する。任意のk方向の端の境界点の集合が超曲面を包み、積分面を構成する。
(注意おわり)
上の(hの値に応じた)4つの式の和をとれば(全てのhの値で和をとった)以下の式が成り立ちはするが、以下の式よりも、hの値に応じた上記の4つの公式の1つ1つに分けた公式を把握する方が望ましいと考える。
そうする方がdf*hk での面積積分の具体的積分範囲が明確に定義されるので、計算の見通しが良いからである。
《凹凸のある超曲面での積分の定理に拡張》
また、4次元空間内で凹凸のある超曲面が、微小な積分領域dSi 同士を境界を重ね合わせて形成できる。その境界でつないだ両dSi の、その境界での境界積分の値は正負が逆になる。そのため重ね合わせた境界での積分の値は相殺される。そして、境界で重ね合わせて連結した積分領域の露出する境界での境界積分のみが残る。そのため、超曲面に4次元空間内での凹凸があっても平坦な積分領域と同じく、超曲面での超面積積分(体積積分)が境界積分(面積積分)に変換される関係があると考えられる。
実際、そのようになっているかどうかを、以下の、(dx0)Λ(dx1) 面に垂直な3つの超平面を境界bと境界cで連結して構成した超曲面を例にして、具体的に計算して確認する。
このうち、境界bで接続する2つの部分を具体的にあらわす。境界aから境界bまでの部分(dS0 のみがある)は以下の形である。
境界bから境界cまでの部分(dS1 のみがある)は以下の形である。
境界bは境界面ABCDである。この境界面ABCDを重ねて、上図のabの部分がx1 方向で接続し、bcの部分がx0 方向で接続することがわかる。境界面ABCDは、ab部分直方体の外側を向いた左回りの表面であり、bc部分直方体の内側を向いた左回りの境界面であることが分かる。そのため、境界面ABCDに対してab部分とbc部分が互いに反対側で接続していることがわかる。
先ず、左端の境界aから境界bまでの部分を計算する。
k,m=0,2の部分も以下のように計算できる。
また、k,m=0,3の部分も以下のように計算できる。
次に、境界bから境界cまでの部分を計算する。
k,m=1,2の部分も以下のように計算できる。
k,m=1,3の部分も以下のように計算できる。
次に、境界cから右端の境界dまでの部分を計算する。
この計算だけで無く、k,m=0,2の部分も計算し、k,m=0,3の部分も計算するが、その説明は省略する。
以上の3つの部分を合わせた、4次元的空間内で凹凸のある超曲面での積分の結果は以下の式にまとまる。(なお、積分の要素のdSk は、超曲面に存在する部分のdSk のみである)。
ここで、テンソルAkm が反対称テンソルなので、以下の関係が成り立つ。
そのため、以下の関係が成り立つ。
以上の計算では、境界での積分は、境界bと境界cが相殺されて消え、残った境界のみの積分になった。 こうして、超曲面に4次元空間内での凹凸がある場合も平坦な積分領域での計算と同じく、超曲面での超面積積分(体積積分)が境界積分(面積積分)に変換される関係がある。
この関係が成り立つのは、テンソルAkm が反対称テンソルであるからである。テンソルAkm が対称テンソルの場合はこれは成り立たない。超曲面に4次元空間内での凹凸がある場合には、テンソルAkm が反対称テンソルであることがこの公式の必須条件である。具体例で考えたことで、この条件の必然性がハッキリ分かった。こういう公式の意味がハッキリわかるので、公式を具体例で確かめるということは止められないと思う。
この公式は、以下の微分形式であらわす定理の系である(ここで、∂Sは境界での積分をあらわす)。(ここをクリックした先のサイトが参考になる)。
(6.17)
(注意)ここで、微分形式の定理を使うためにテンソルAik が反対称テンソルであることが必要であった。4次元空間内で凹凸のある超曲面において一般的に成り立つ定理のためにAik が反対称テンソルであることが必要だったのである。しかし、4次元空間内で凹凸の無い平坦な超曲面のみでは、テンソルAik が反対称テンソルである必要が無いことに注意すべきである。その理由により、4次元空間内で凹凸のあるわけでは無い4次元体積での積分にかかわる4次元でのガウスの発散定理においては、その定理でテンソルAik を使う場合でも、そのテンソルは反対称テンソルで無くても定理が成り立つ。
(注意おわり)
以上で得た式6.17の解は式6.11の符号を変えて定義を修正しないと符号が異なってしまう。この6節の一連の公式が成り立つためには、ランダウの「対偶」の定義の式6.11とその他の式を、ホッジの星印作用素の式から符号を変えて定義する必要がある。すなわち、以下のように定義する必要がある。
《ランダウの「対偶」の定義の修正》
このランダウ「対偶」の定義は、以下の定義だと考えるとわかりやすいと思う。
このランダウ「対偶」の定義は、以下の定義だと考えるとわかりやすいと思う。
(注意)ランダウの§6の「対偶」の定義は、ホッジの星印作用素の項の添え字の上付きと下付きを逆に表現しているので、ランダウの対偶の定義を具体的にリストアップすると、以下の関係が成り立つ。
ホッジの星印作用素を2重に作用させた場合に、元の要素の符号が変わってしまい元に戻らない場合がある。ランダウが§6で定義する「対偶」(定義を正しく修正したもの)でも、2重に作用させた場合に元に戻らない場合がある。
《以下は、ランダウの「対偶」の演算のリストである》
【リンク】
「高校物理の目次」