2023年2月7日火曜日

力学《40節》ハミルトン方程式

【力学】
【第7章】正準方程式
《第40節》ハミルトンの正準方程式
 ラグランジアン(および、それから導かれるラグランジュ方程式)による力学法則の定式化は、一般座標qと一般速度(dq/dt)の関数のラグランジアンLを与えることで系の力学的状態を記述している。この記述は力学法則を定式化する唯一の可能性ではない。以下では、一般座標qと一般運動量pの関数のハミルトニアンHを与えることで系の力学的状態を記述する。
 一般座標qと一般速度(dq/dt)という独立変数の関数のラグランジアンLから、一般座標qと一般運動量pという独立変数の関数のハミルトニアンHへの移行処理は、ルジャンドル変換によって行われる。
 一般座標qと一般速度(dq/dt)の関数のラグランジアンLの完全微分が以下の式であらわせる。

ここで、

なので、

とあらわせる。
この式は、以下のように変形できる。

ここで、運動量pi が複数の座標qi の関数である場合に、以下の式が成り立つ。

この関数Hは、系のエネルギーをあらわしている。関数Hは、式(40.3)で、座標q と運動量p を独立変数に持つ関数である。関数Hは系のハミルトニアンと呼ばれる。そして、次の方程式(40.4)が成り立つ。

この方程式はハミルトン方程式(正準方程式)とよばれている。

 ラグランジュ方程式は座標変換に対して不変であった。このハミルトンの正準方程式もそうである。特に、ハミルトン形式では、座標qi と運動量pi が、関数Hでの対等な立場の独立変数であるという特徴がある。

信じられなければ検算すればいい
  上ではルジャンドル変換の結果をそのまま当てはめて,あっけなく正準方程式を導いているが,どうも信用ならないと疑うなら式 (40.2) をpiやqiで偏微分してやっても良い.基本に返って丁寧に計算してやれば同じ結果が導けるだろう.


お人好しでは困る
 ここまでラグランジュ形式からハミルトン形式への移行が何の苦も無く出来るような説明をしてきたので,誤解を生じているのではないかと心配している.
 実はこの変換はいつでも可能というわけではない。d(qi)/dtをpiに変換する以上,全てのd(qi)/dtをpiの関数として表した上で置き換えることが出来なければならないのである.

 piが与えられたときにそれをd(qi)/dtで表された式に変換することは、pi=∂L/∂(d(qi)/dt)の関係を使って置き換えればいいだけだろう.そうではなく,ここではその逆変換が言えるかどうかということが問題なのだ.そのためには次の条件が満たされている必要がある.

なぜこれでいいのかというところが分かりにくいので説明しておこう.この式の左辺のカッコの中身はLを(d(qi)/dt)で微分して,その結果を(d(qk)/dt)で微分したというのだから,結局piを(d(qk)/dt)で微分したのと同じだ.

この左辺は線形代数に出てくる「ヤコビアン」と同じ形式になっている.ヤコビアンを知らない人は後で勉強してもらったらいいので心配は要らない.簡単な例を挙げて説明しておけば,ヤコビアンとは,座標(x,y,z)から座標(x',y',z')に座標変換するときに,

と計算して求める値であり,微小体積dx dy dzとdx' dy' dz'との体積比を表しているのだった.この値が 0 にならないでいてくれるということは,この例の場合にはちゃんと 3 次元から 3 次元への変換が出来ているということを意味しているのである.

【リンク】
pdf 古典力学 (解析力学)
東京大学数理物理学班「古典力学」
「高校物理の目次」


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