2023年2月4日土曜日

力学《45節》正準変換

【力学】
【第7章】正準方程式
《第45節》正準変換
 正準変換とは何か?
 ラグランジュ方程式は座標変換に対して不変なのであった。そしてハミルトンの正準方程式もそうである。ところで,ハミルトン形式では座標qi と運動量pi は対等な立場の変数として論じられるのであった。それであるのに「座標」変換しかないというのはどういうわけだ,不自然じゃないか,というのである。全く無茶なことを言ってくれる。しかし,学問というのは一見無茶に見える要求に何とか応えようとして発展してきたものであるようだ。


 この辺りの事情をもう少し詳しく話そう.qi で表されていた粒子の位置座標が,座標変換によって新しい座標Qi で表し直されるとする.つまり各Qiはqi の関数として表される。

 一方,座標が変換されれば,当然それに応じて運動量も変換を受けることになるだろう.しかし,新しい運動量は元の運動量の関数にもなっているはずだ.

 新座標は旧座標だけの関数なのに,新運動量は旧座標と旧運動量の関数になっている.この辺りのアンバランスが気に入らないのである.いっそのこと,新座標も旧運動量によって決まるような一般的な変換を考えてはどうだろうということになる.

 こうすれば座標と運動量は本当に対等の立場に立てることになるではないか.もうメチャクチャである.座標が運動量で決まるなんて,相対性理論を思い浮かべるような話だ.実は相対性理論というのは解析力学をお手本にしたふしがあるのだが.

 このような形のあらゆる変換を認めてしまえば,せっかくの正準形式の理論が使えなくなってしまう可能性が出てくる.そこで一つだけ次のような条件を課することにしよう.
「変換してもハミルトンの正準方程式の形式が成り立つこと」

そのような変換を「正準変換」と呼ぶことにする.

 この定義によれば,全ての「座標変換」は正準変換の一部として含まれることになる.
 つまりこれからやろうとしているのは,「座標変換」を、もっと広い意味を持つ「正準変換」に拡張するという作業なのである。

正準変換の母関数については、ここをクリックした先を参照。


 運動にともなう量p,qの変化を、1つの正準変換とみなすことができるということに注意しよう。その場合は、与えられた時刻tに経過する点qi 、および、時刻t+r に経過する点q(t+r) 、を変数とする作用Sがその正準変換の母関数になっている。

【リンク】
pdf 古典力学 (解析力学)
東京大学数理物理学班「古典力学」
「高校物理の目次」


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