2023年1月14日土曜日

場の古典論《14節 角運動量》の考察

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▷角運動量4元テンソルの行列表現
▷回転粒子対アニメーション
▷速度vで運動する慣性基準系K’での角運動量

【場の古典論】
【第2章】相対論的力学
《第14節》角運動量
 第14節には、ランダウ(1908-1968)の没後に書き加えられた部分の解釈が難しいので要注意と考えます。先ずは、第14節の内容を紹介し、次に、解釈の難しい部分を詳しく解析します。

《大前提》
 先ず、空間が一様かつ等方的であり、時間も一様である性質を持った慣性系で記述することを大前提にして考える。

 空間の等方性は、ラグランジュアンが4次元空間の回転角度にかかわる変数をあらわには含まない(循環座標)ことを意味する。閉じた系に対しては、その空間と時間の等方性のために、ラグランジュアンは4次元空間の回転によって変化しない。

 xi を慣性系Kにおける粒子の、時刻t=0 における座標とする。4次元空間において、慣性系の原点のまわりに無限小回転をおこなおう。これは、座標xi と新しい座標x’i との差 x’i - xi が無限小の係数 δΩik を持つ1次式(14.1)で与えられるような変換を行うことに相当する。

ここに4元テンソル δΩik の成分は、回転のさいに、時刻t=0 における慣性系の原点と粒子の位置との間の世界間隔 ds (動径ベクトルの長さ)が変らない:

という関係を満足しなければならない。
式(1)に式(14.1)を代入する。

この式(2)は、任意のxiに対してみたされなければならない。(xi)(xk) が対称テンソルであることを考えると、δΩik は反対称テンソルでなければならない。

4次元空間の回転に係る物体の変数(パラメータ)であるδΩikはラグランジアンにあらわには含まれない(循環座標)。したがって、このパラメータに対応する一般化運動量は保存される。
 作用Sを座標の関数とみなすと、「力学」の43節で説明されたように、一般化運動量pi が、作用Sの座標xi による偏微分であらわせる。 すなわち、pi=∂S/∂xi で与えられる。ここで9節の式(9.12)によるpi の定義を使う。

である。和は系の粒子全部にわたる。この式に式(14.1)を代入する。


ここで、同じものをあらわす2つのパラメータを1つで代表させる(〔pdfが〕教科書別:ランダウ「場の古典論」前半)。


4次元空間の回転に係る物体の変数(パラメータ)であるδΩikはラグランジアンにあらわには含まれない(循環座標)。したがって、このパラメータに対応する一般化運動量は保存される。
 作用Sを座標の関数とみなすと、「力学」の43節で説明されたように、この一般化運動量は、作用Sの座標による偏微分であらわせる。 すなわち、この一般化運動量は∂S/∂Ωik (i<k)で与えられる。(14.3b)から、

が一般化運動量である。こうして、閉じた系では、この式の右辺のテンソルであらわされる一般化運動量が保存され、物体のテンソル
  (14.4) 
(誤植を訂正した)が保存されることがわかる。この式の各成分は、i<kの場合で定義されたが、i>kの場合でのテンソルの成分もこの式で定義することにする。この反対称テンソルを角運動量4元テンソルという。(「角運動量4元テンソルの行列」は、ここをクリックした先にある)。
 このテンソルの空間成分は、明らかに、3次元角運動量

の成分

になっている。
(上記の式(14.4)の(静止系Kでの)角運動4元テンソルMは静止系Kの原点に対して計算する。下記の式(14.4b)の(慣性基準系K’での)角運動4元テンソルM’は慣性基準系K’の原点(時刻t=0では静止系Kの原点に一致する)に対して計算する。その慣性基準系K’の原点が静止系Kの原点に一致する時刻t=0で計算しても他の時刻の場合と同じ角運動量になるので、その時刻t=0に、静止系Kの原点に対して計算したとみなせる。(静止系Kの原点は静止系Kでは回転物体の重心であるが、後で説明するように、慣性基準系K’では、原点が回転物体の重心では無くなる)。)
(14.4b)

成分

は、ベクトル

(誤植を訂正した)を作る。
(注意)このベクトルは、角運動量4元テンソルの成分で構成するベクトルなので4元ベクトルでは無いことに注意すること。後に23節で学ぶ電場や磁場も、電磁場テンソルの成分で構成するベクトルなので4元ベクトルでは無い。

閉じた系に対して、Mik が保存されることから、

が成り立つ。他方、全エネルギー ΣE も保存されることから、この等式を

という形に書くことができる。これから、動径ベクトル
  (14.6)
をもつ点は速度
  (14.7)
で一様に動くことがわかる。この速度は、系全体としての運動の速度にほかならない。(この速度は(9.8)によってその運動量とエネルギーとに関係づけられる)。式(14.6)は、系の慣性中心(重心)の相対論的な定義を与えるものである。
 この式(14.6)による重心の定義は、もっと詳しく説明すると、以下の式のように、
(重心位置)=(4元ベクトルに係る量)+(角運動量4元テンソルに係る量)
で定義したことを意味する。


《数理物理学班》解説PDF: [2]古典力学の解説PDF
 相対論では、並進対称性だけでは重心の速度が全運動量に比例すること(上式の(14.7))は導けません。実は、ガリレイ変換の相対論版が回転変換(ローレンツ変換) だったように、今回求めたガリレイ変換のネーター保存量の相対論版は、4 元の正準角運動量の成分(M01,M02,M03 ) です。その保存性は時空の回転対称性(ローレンツ対称性) を必要とします。


《(第2版には無い)第6版で加えられた文》 
「ベクトル(14.6)の成分は、どんな4元ベクトルの空間成分にもならない。・・・したがって、同じ粒子の系の重心も、基準系が異なれば、異なる(世界)点になるのである。」

 以下で、この記述が誤りか正しいかを考察する。(「重心位置=4元ベクトルに係る量+4元テンソルに係る量」で定義されていると考えれば、その通りであると理解できると思いますが、、)。
 こういう考察をすることが、これから研究者になろうとする人の研究活動の入り口だと思う。
 先ず、2つの粒子の初期の位置が一致する場合は、ベクトル(14.6)で与えられる重心の位置は、ローレンツ変換によって、動径4元ベクトルとして変換される点(4元ベクトルの空間成分)になることを示す。

上図の静止した静止系Kに対して、そのx軸方向に速度vで動く慣性基準系K’を考える。静止系Kのt軸の線は世界線であり、その線上の点は世界点である。世界点は動径4元ベクトルであらわされる。ここで、静止質量mの粒子がある方向に速度wで運動し、静止質量Mの粒子が、その反対方向に速度nで運動するものとする。そして、静止系Kでの2粒子の重心が静止系Kの原点に(t軸という世界線上に)ある場合を考える。
 この重心は静止系Kのt軸上にあるが、慣性基準系K’でみた重心位置はどうなるか。慣性基準系K’で見ても、この2粒子の重心が、x方向に速度-vで運動する静止系Kの原点位置に留まるか否かを調べる。もし、慣性基準系K’での重心位置も、静止系Kの原点位置に留まるならば、重心位置は静止系Kの原点位置という動径4元ベクトルの空間成分であることになる。
 以下で、慣性基準系K'での、この2粒子の重心の運動速度を計算する。2つの粒子の初期の位置を、慣性基準系KおよびK'の共通の原点にあるものとする(その後、慣性基準系K’の原点は移動する)。すなわち、初期状態では2粒子の重心は静止系Kの原点にある。重心の位置の移動量は、重心の速度(ベクトル)に慣性基準系K'の時間t’を掛け算することで得られるので、重心の速度を調べるだけで重心の位置も定まる。
 先ず、速度wで運動する質量mの粒子の慣性基準系K’で観測した速度を計算する。速度の合成の定理から、以下の速度が得られる。

 次に、速度nで運動する質量Mの粒子の慣性基準系K’で観測した速度を計算する。(ただし、速度ベクトルnの方向は、負の方向であるものとする)。速度の合成の定理から、以下の速度が得られる。

 次に、慣性基準系K'で観測されるJの式を計算する。


次に慣性基準系K'で観測される2粒子の総質量MT=ΣE/c2を計算する。

次に慣性基準系K'で観測される2粒子の重心のx方向の速度を計算する。

重心のx方向の速度は、慣性基準系K’で観測した静止系Kの原点の速度と同じである。
 次に慣性基準系K'で観測される2粒子の重心のy方向とz方向の速度を計算する。

以上の計算の結果、2粒子の重心は、静止系Kの原点位置と同じ速度で運動し、重心位置は静止系Kの原点位置に留まることがわかった。
 よって、慣性基準系K'での、世界線が交差する2粒子の重心の位置は静止系Kの原点位置に留まり、重心の位置は、静止系Kの原点の世界点をあらわす動径4元ベクトルの空間成分である。2粒子の世界線が交差する場合は、2粒子の相対運動の角運動量が無く0である場合である。

 しかし、静止系Kでの2つの粒子の初期位置が静止系Kの原点位置に無い場合は、以下のようになる。
 静止系Kでの2つの粒子のt=0の時点での位置が、その2つの粒子の重心が静止系Kの原点になる以下の座標位置にある場合を考える。(以下の式のパラメータχは時間の次元を持つ)。

速度wで運動する質量mの粒子のt=0における世界点の、 慣性基準系K’での時刻t’と位置とを計算すると以下の式の結果が得られる。

ここで、この粒子が速度w’で運動することを補正し、時刻t’=0でのこの粒子の位置を計算する。

一方、速度nで運動する質量Mの粒子のt=0における世界点の、 慣性基準系K’での時刻t’と位置とを計算すると以下の式の結果が得られる。

ここで、この粒子が速度n’で運動することを補正し、時刻t’=0でのこの粒子の位置を計算する。

時刻t’=0でのこの2つの粒子の重心を計算する。

この重心のx座標だけでも、静止系Kの原点(静止系Kでの重心)のx座標と一致することには、救いがあると思う。

こうして慣性基準系K’で計算した2つの粒子の重心位置は、2つの粒子の世界線同士が交差しない(角運動量が0で無い)場合は、時刻t’=0において、(静止系Kの原点と重なる原点を持つ)慣性基準系K’の原点にはなくΔy,Δzずれる。すなわち、慣性基準系K’で観測した重心は、静止系Kの原点に来ない。ただし、その重心も、静止系Kの原点(静止系での重心)と同じ速度vで移動する。
 このように、回転する2粒子の、慣性基準系K’での重心位置の世界点は、静止系Kにおける重心位置の世界点と異なってしまう。
 特に、静止系Kで下図左のような十字架棒が光速度に近い速度で回転している場合、x方向にその速度に近い速度vで進む慣性基準系K’から観測すると、その十字架棒は下図右のような形で運動していることが計算できた。

慣性基準系K’で観測すると、回転する十字架棒が上図の右のような形に歪んでいるなら、その場合の重心位置は確かに静止系Kの位置からY方向にずれた位置に移動すると考えざるを得ない。
 場の古典論の第6版で、「重心位置がどんな4元ベクトルの空間成分にもならない」と言うのは、このことを指していると考える。以上の計算の結果、場の古典論の内容は誤っていない、と理解できる。

 もう1つのモデルとして、静止系Kで、正電荷の粒子と負電荷の粒子の対が光速度に近い速度で回転しつつ静電気の引力(及び磁界によるローレンツ力)と遠心力でバランスを保って、粒子対の間隔が一定値に保たれている。それを光速に近い速度vで運動する慣性系K’で観測したモデルを考える。(金の原子では1s軌道の電子が光速度の半分くらいの速度で原子核の周りを回っているので、その電子の回転運動を考えた方が良いかもしれない)。その粒子対は、慣性基準系K’では、下図の右から左の順に推移して回転する。(ただし、絶えず光速度に近い速度ベクトルの方向を変えて運動する電荷が発生する電束の形と磁束の形を求めるのは難しい。)

上図のように、正電荷と負電荷の対が回転するモデルでも、粒子対の回転の形が歪む問題を生じる。
下に動作のアニメーション(通信データは消費しない)を示す。
 回転十字架などのモデルが回転する場合に、静止系Kでは原点を中心にした形が回転対称な形に保たれるが、慣性基準系K’では、回転物体の重心が速度ーvで運動し、回転運動が歪んだり、物体の重心位置がずれる。それは、時空のゆがみによる現象だと考える。また、「回転物体全体を速度vで運動するように加速すると、やはり、時空の歪みにより、その加速方向に垂直な方向に重心が移動する」と解釈する。
 水素原子のような複合粒子が、電荷が光速度に近い速度で回転運動していて、量子力学の電荷の波動関数が以下のような確率分布を持っているとき、

 その複合粒子が、x方向に光速度に近い速度で運動すると、その波動関数の確率分布の形が以下の図のように歪むのではないかと推測する(仮説です)。


《角運動量4元テンソルが重心の謎を解くカギだ》
 この重心位置の不思議な振る舞いを理解するために、以下で、角運動量4元テンソルの意味を考察する。
 先ず、角運動量4元テンソルを1つずつ書くと以下の式になる。以下で用いるベクトルΔを、重心位置変位ベクトルと名付ける。

《角運動量4元テンソルの行列》
角運動量4元テンソルをまとめると以下の行列になる。

 4元テンソルは、ローレンツ変換によって、動径4元ベクトルの積のように変換される。そのため、慣性基準系の静止系K(ct,x,y,z)とそれに対してx軸方向へ速度vで運動している慣性基準系K'(ct',x',y',z')の間では、角運動量4元テンソルの各成分が、(6節の問2の解のように)以下のようにローレンツ変換される。(後に23節で学ぶ電磁場テンソルの各成分と同様に変換される)

この式を解くと以下の式が得られる。

 重心位置変位ベクトルΔは、ローレンツ変換によって、4元ベクトルとは異なって変換され、慣性基準系毎に異なる世界間隔のベクトルに変換される。

《回転する粒子対の角運動量4元テンソル》
 角運動量4元テンソルは、回転する正電荷・負電荷対のモデルの場合には以下のようになる。(回転の半径をrとし、粒子の静止質量をmとする)。ローレンツ変換した後の、慣性基準系K'での角運動量4元テンソルが表す角運動量も、静止系Kでの角運動量4元テンソルが表す角運動量も時刻t=0における同じ原点(同じ世界点)を中心にした角運動量を表す。

静止系KでのテンソルMと、慣性基準系K’での(以上の式でローレンツ変換した結果の)テンソルM’とは、以下のテンソルになる。


《重心位置変位成分Δのローレンツ変換》
 回転する物体の重心位置は、
(基礎重心位置ベクトル)+(重心位置変位ベクトルΔ) ,

であらわせると解釈できる。ここで、基礎重心位置ベクトルは4元ベクトルである。
そのように、回転する物体の重心が、基礎重心位置ベクトルから、(4元テンソルの成分に係る)重心位置変位ベクトルΔの分だけずれていると解釈できる。
 ここで、速度ベクトルvで運動する慣性基準系K’での重心位置変位ベクトルΔが、静止系Kでの重心位置変位ベクトルからずれる差のベクトルが、以下の式で計算できる。(以下の式で、回転する物体の(静止系Kでの)角運動量ベクトルをMとする)。

(この位置のずれの大きさは、回転半径rの(w/c)(v/c)倍である。)
 結局、回転する物体の重心位置の世界点は純粋な4元ベクトルではあらわせない。速度ベクトルvで運動する慣性基準系K’では、重心位置が、静止系Kでの重心位置とは異なる。その重心位置の差のベクトルが上の式であらわされる。
 1個の電子でさえも回転している。そのため、電子の重心位置も、慣性基準系K’では、静止系Kとは異なる位置に変わる。

《角運動量成分のローレンツ変換》
 また、先の、静止系Kの原点を中心にして回転する正電荷・負電荷対の角運動量Mは、慣性基準系K’で観測すると、ローレンツ変換によって角運動量テンソルM’に変わる。また、慣性基準系K’では、その正電荷・負電荷対の重心位置が静止系Kの原点位置からずれる。そのため、慣性基準系K’では、その原点(静止系Kの原点と同じ)に対して速度vで運動する正電荷・負電荷対の全質量の角運動量が生じる。それが、重心を中心にした、正電荷・負電荷対の角運動量に加わる。その総和が、原点(静止系Kの原点と同じ)を中心にした正電荷・負電荷対の角運動量として観測される。慣性基準系K’で観測する、原点を中心にした角運動量と、重心を中心にした角運動量を計算して以下の式を得た。
〔角運動量〕速度vで運動する慣性基準系K’での角運動量

(ただし書きの意味:4元テンソルには、4元ベクトルとは異なるローレンツ変換での不変量がある)
 上の結果では、角運動量4元テンソルを使わないで計算した結果と、角運動量4元テンソルを使った結果が一致した。

 静止系Kで観察した回転物体の角運動量が、慣性基準系K’で観察すると、値が変わる。そのため、粒子対の運動を、物体の重心系K=静止系Kでは円運動に維持させつつ、回転する粒子対全体を、慣性基準系K’で観測すると、速度vで運動するように加速するためには、粒子対に回転モーメントも加わえなければならないことになる。回転物体を相対論で扱うのは難しい。
 なお、量子力学では、角運動量は量子化されてはいるが、ランダウの物理学小教程「量子力学」の32ページを見ると、角運動量などの物理量は量子化されていても、各固有値の波動関数を重ね合わせた波動関数には、平均値の物理量(値が連続的に変わる)が対応する。そのため、連続的な値の角運動量Mを考えることができる。
  また、ディラック方程式の解説を見ると、以上での結論の「観測する慣性基準系K’ごとに角運動量M’の値が連続的に変わる」ことを否定しているわけでも無いように見える。(ディラックの波動関数の確率密度が、ローレンツ変換される4元ベクトルを構成する(7.127))。量子力学でも、慣性基準系K'で観測される角運動量M’は、静止系Kの角運動量Mから、角運動量テンソルの変換規則に従って変換されると考える。

《角運動量4元テンソルの解釈》
 慣性基準系K’の角運動量4元テンソルM’は、以下の成分からなるテンソルであると理解できる。
(1)物体の重心位置が原点からずれる重心位置変位ベクトルΔに係る成分を持つ。重心位置変位ベクトルが生じる原因は時空の歪みだと考える。
(2)(静止系Kの原点を中心にした慣性基準系K'の角運動量)=(物体自身の重心を中心にした角運動量)+(物体全体が原点に対して回転する角運動量)=(値がずれた角運動量)が慣性基準系K'の角運動量の成分となっているように観測される。
(3)角運動量4元テンソルM’の成分は4元ベクトルの成分ではない。角運動量4元テンソルM’の成分は、23節の電磁場テンソルの成分と同様にローレンツ変換される。

(物理的意味を考える:電荷の中心もずれて見える?)
 1つの物体が持つ電荷は、物体が運動しようがしまいが電荷の量に変わりはない。静止系Kで回転している物体を慣性基準系K’で観測すると重心位置がずれて見える。回転十字架の歪み具合からすると、物体中に分布する電荷の中心位置も、慣性基準系K’が異なれば、重心といっしょに、以下のように移動するだろうと考えられる。
(思考実験1)
 静止系Kで、物体Aと物体Bが重力で引き合っているのを、静電気が打ち消して、互いの位置が変わらないバランスを保っているとする。それを慣性基準系K’で観測しても互いの位置が変わらないバランスを保っていることは同じである。慣性基準系K’が異なる場合でも、重心を中心にして対向する物体Aと物体Bが重力で引き合うならば、物体Aと物体Bが重心位置と同じ位置を中心にして静電気で反発し合って重力を打ち消してバランスが保たれると考える。静電気の場と重力の場は、同じローレンツ変換の式に従って変換されると考える。そのため、重力の中心が慣性基準系K’に応じてずれるならば、(電気力線の束の形も歪むので)静電気の中心も同じ様にずれて見えると考える。

(もっと深刻な問題がある)
 回転物体の重心位置の世界点が、慣性系ごとに異なるという問題は深刻な問題だと思う。重心の世界点の位置が観測系ごとに異なるというのは、回転する粒子の位置(重心)が確定しないと解釈でき、深刻な問題があると思う。 「回転する2粒子の重心がずれるのは、粒子同士を引き付ける力の場の質量が計算に入っていないからだ!」という反論を検討するために、2粒子を紐で結んで回転させている下図の第3のモデルを考えた。

しかし、紐を含む全体が慣性基準系K’の原点から上方向(Y方向)に移動するので、紐の重さを考えたとしても、重心が原点からずれることは避けられない。
 位置が確定しない問題を改善するためには、運動量が確定していることも疑った方が良いかもしれない。
しかしながら、問題はそれだけでは無い。正電荷・負電荷対の回転モデルには、水素原子の陽子・電子対の回転モデルと同じ、もっと深刻な問題がある。正電荷を持つ粒子と負電荷を持つ粒子が重心を中心にして回転するならば、その電荷の移動・振動に伴い電磁波が発生する。その電磁波が発生する結果、粒子対は回転運動のエネルギーを失い、速やかに一体化して電荷が中和されるハズである。そのような不安定なモデルを前提にした粒子対の運動を計算して良いのだろうか?そもそも、水素原子をはじめとする原子が、原子核と電子が回転運動をしているのに、なぜ崩壊しないで安定しているのだろうか?
《時空の歪みの補正》
 光に近い速度Vで運動している正電荷・負電荷対が歪んだ回転運動をしているとき、この粒子対を代表する点の位置は、時空の歪みを補正して、値を4元ベクトルにした以下の位置座標を使う方が良さそうに思える。


すなわち、測定した物体の重心位置を(物体の重心と同じ速度Vで運動する慣性系で観測した、物体の角運動量Mと運動質量m)を使って補正する。この補正により、慣性基準系K’で計算した重心位置から、静止系Kでの重心の位置が求められる。この補正により、時空が歪んで見える歪みの誤差を小さくできるだろうと考える。
 なお、この問題で悩みすぎて時間を費やすよりも、角運動量が量子化されていると教える量子力学をしっかり勉強することに時間を使った方が良いと思う。

(想像力をふくらませて物理的意味を考える)

 このモデルで、m=Mとし、(慣性基準系K’の速度ベクトルv)=(粒子の運動速度ベクトルw=-n)とし、慣性基準系K’は粒子mの速度ベクトルwと同じ速度ベクトルvで運動するものとする。特に、粒子同士が弱い重力場で引き合うのを電荷により反発して打ち消す弱い電荷が粒子に帯電しているものとする。
 そして、速度vが光速度cに極めて近く、βが1/100くらいに小さいものとする。そうすると、静止系Kでの2粒子の総質量は200mぐらいで大きい。速度vで運動する慣性系K’で見た2粒子の質量は20000mに(静止系Kでの質量の100倍)大きくなる。速度vが更に光速度に近づくと、慣性系K’で見る質量は更に、静止系Kでの質量よりも大きくなる。その質量の大部分は、慣性系K’の運動する方向と反対方向進む粒子Mの質量が運動によって大きくなることで大きくなる。速度Vが十分に光速度cに近づくと、慣性系K’で見る粒子Mの運動質量がいくらでも大きくなると考えられる。粒子Mの運動質量がそれほど大きくなる場合に、その粒子Mからの大きな重力で粒子mが引き寄せられるのではないか?
 その答えは以下のように考える。重力の大きさは、(電磁場と同様に)粒子の運動の方向ではあまり大きくならずに、粒子Mがとても大きな運動質量を持っても、その粒子Mと粒子mが帯電した電荷の電場を介して反発し合う力と釣り合う大きさの重力場しか生じないと考える。

(想像力をふくらませて物理的意味を考える(2))
 もう1つ考える。自分が回転すると世界全体が回転して見える。自分は世界の中心にいるものとする。回転している自分から見える世界の変わりざまは、世界全体が自分に対して回転することにより生じる現象と考える。自分から十分遠方の点は光速度で回転運動していると見える。それより先はもっと早い速度で回転運動している。それでも大丈夫なのは、空間の歪みのためだと考える。自分から等速直線運動をして遠ざかっているものも、自分から見ると、自分の回りを回転するらせん運動をしながら自分から遠ざかっていくように見える。等速直線運動がそうなってしまうのも、空間の歪みによるものと考える。自分が、更に、光速度に近い速度Vで等速直線運動をすれば、回転している世界が、-Vの速度で自分に対して運動する運動が加わって運動するように見える。しかも、その-Vの速度の運動は、絶えず速度-Vの運動ベクトルの方向を変える運動になる。世界は回転しながら、その運動プラス、(絶えず向きを変えるが)-Vの速度の運動をする。世界の全ての物体の重心は、角運動量Mを持つ世界の物質が-Vで運動するので、-Vで運動する前の重心位置(自分の位置)からずれている。しかし、そのずれた世界の重心位置は、自分を中心にして回転運動して絶えず位置を変えると思う。そのような運動なので、そのように位置を変える重心を中心にして世界の角運動量を計算する意味は無いと思う。世界の角運動量は観測者である自分自身の位置を中心にして計測すべきだと思う。同じ様に、速度Vの運動物体の角運動量も、運動物体の重心を中心にして計算するのでは無く、静止系での物体の重心位置を中心にして計算すべきと思う。回転運動が歪んだり、物体の重心位置がずれるのは、時空のゆがみによる現象だと考える。


【リンク】
空間の等方性に起因する保存量としての角運動量
pdf 古典力学 (解析力学)
東京大学数理物理学班「古典力学」
「高校物理の目次」


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