2022年11月7日月曜日

「場の古典論」電磁場のラグランジュアン

電磁場テンソル
マックスウェルの方程式の第2の組


【場の古典論】
【第4章】場の方程式
《第27節》電磁場の作用関数
 与えられた電磁場のなかで運動する粒子に対する作用積分は、自由粒子の作用の項と、粒子の電磁場との相互作用の項との2つの部分からなっていた。次に、電磁場の存在に係る作用積分の項、すなわち、電磁場を生み出す源の方程式を導き出すための作用積分の項を加える。
 自由粒子の作用の項と、粒子の電磁場との相互作用の項との2つの部分からなる作用積分は、以下の式であらわされた。

 この作用積分の項は、粒子毎に設けられ、複数の粒子が存在する場合には、これらの項が複数存在する。
 次に、これらの作用積分の項に、電磁場の存在に係る作用積分の項Sf を加える。その項Sf は、電磁場それ自身の性質のみに依存する、粒子に関係しない作用積分の部分である。この作用積分の項Sf は、電磁場自身を決定する方程式を見いだそうというときには不可欠な項である。作用積分の項Sf はローレンツ変換によって不変なスカラーでなければならず、したがって、あるスカラー量の積分でなければならない。
 電磁場に対する、この新たな作用積分の項Sf の被積分関数のスカラー量の形を決定するために、電磁場の非常に重要なつぎの性質から出発しよう。実験が示すように、電磁場はいわゆる重ね合わせの原理を満足する。この原理の内容は、『1つの粒子の電荷がある電磁場をつくり、他の粒子の電荷が第2の電磁場を作るならば、2つの粒子がいっしょに作る電磁場は、各粒子が個々に作る電磁場を単合成したものである。』 という命題であらわされる。このことは、各点の電磁場の強さは、その点での個々の電磁場のベクトルの和に等しいことを意味する。
 電磁場の方程式の任意の解は、自然に存在することのできる電磁場を与える。重ね合わせの原理によると、任意のそのような電磁場の和もまた、自然に存在しうる電磁場でなければならず、電磁場の方程式を満足しなければならない。
 作用積分の被積分関数であるスカラー量のラグランジュアンLを微分した形でラグランジュ方程式が計算される。そのラグランジュ方程式において電磁場が記載されることになるであろう。その微分した形のラグランジュ方程式の電磁場の表記が、電磁場が重ね合わせられるように、1次の電磁場であらわされるであろう。ラグランジュ方程式では作用積分Sf が微分されることで電磁場の表記の次数が1だけ減ずる。そのため、作用積分Sf の被積分関数には電磁場について2次の表式のスカラー量がこなければならない。
 この作用積分Sf の被積分関数のスカラー量の表式に電磁ポテンシャルAi が入ることはできない。なぜなら、電磁場ポテンシャルAi は一義的にきまらないからである。したがって、作用積分Sf は電磁場テンソルFik のある2次の関数のスカラー量の積分でなければならない。
 電磁場テンソルFik から作ることのできる、擬スカラーでない2次のスカラー量はただ1つ存在する。それは、

この2つの不変量のうち、擬スカラーでは無い、第1行の式であらわされるスカラー量FikFik である。
 こうして、作用積分Sf は以下の式の形をもたなければならない。

ここで、積分は、3次元空間全体と2つの与えられた時刻のあいだの時間にわたってとる。aはある定数である。被積分関数にスカラー量FikFik=2(H2-E2) がくる。ここで、電場Eは以下の式であらわされる。

この式のように、電場をあらわす式には、4元ポテンシャルAi の時間微分を含むが、作用積分Sf の被積分関数のなかでは(∂Ai/∂t)2 には正の値が掛け合わされなければならない、(したがってE2 には正の値が掛け合わされなければならない)ことがたやすくわかる。なぜなら、仮にSf のなかの(∂Ai/∂t)2 に掛け合わされる値が負だとすると、(考えている時間間隔における)電場ポテンシャルAi の時間的変化が十分急激ならば、つねに(∂Ai/∂t)2 の項が任意に大きくなることができ、したがって、Sf を任意に大きな絶対値を持つ負の量にすることができるからである。そうなれば、Sf は最小作用の原理から要求されている極小値をもつことができなくなる不都合を生じる。したがって、係数aは負でなければならない。
 aの値は電磁場の測定に用いる単位のとり方に依存する。aの値および電磁場の測定の単位を定めてしまったあとでは、他のすべての電磁的な量の測定に対する単位はきまってしまうということに注意しよう。
 すなわち、このaの値の大小によって、電磁場の発生し易さが決まる。次のページの、30節の解説で説明するように、ある大きさの電流や電荷によって、どれくらいの大きさの電磁場が作り出されるかが、このaの値の大小によって定まることになる。
 以下では、われわれはいわゆるガウスの単位系を用いることにする。この系では、係数aはディメンジョンなしの量で-1/(16π)に等しい。
 したがって、電磁場に対する作用積分Sf は以下の式になる。

よって、電磁場に対するラグランジュアンLf は以下の式になる。

よって、電磁場に対するラグランジュアンの項Lf を加えたラグランジュアンLは以下の式になる。

作用積分Sは以下の式になる。

 最小作用の原理を適用するイメージとして、下図のx,y,z,tの4次元空間(z軸は図示しない)に粒子1と粒子2と、電磁場の4元ポテンシャルAi がある場合を考える。「場の古典論」では、この4次元空間は、3次元の空間座標方向での大きさを、時間方向での最初の時刻と最後の時刻の間の時間ΔTの光速度 c 倍のcΔTよりも十分に大きくし、その端の遠方では場の4元ポテンシャルAi が存在しない遠方(ほぼ無限遠)まで広げた4次元空間を考える。

上図のような4次元的な直方体の領域のイメージである。その4次元的な直方体の4次元的な境界面のうち、時間方向での4次元的な境界面(与えられた最初の時刻での3次元空間と、最後の時刻での3次元空間)に、粒子の世界点a1,b1,a2,b2が固定されている。また、電磁場の4元ポテンシャルAi が固定されている。
 粒子1について世界点a1から世界点b1まで作用積分し、粒子2について世界点a2から世界点b2まで作用積分する。あらゆる粒子について、同様に作用積分する。電磁場の4元ポテンシャルAiを微分して電磁場テンソルFik を計算して電磁場のスカラーを求める。そして、上図の4次元的な直方体内の電磁場のスカラーを積分して電磁場の作用積分を求める。
 それらの作用積分の総体の値が最小になるように、粒子1の軌跡と粒子2の軌跡と、電磁場の4元ポテンシャルAiの各時刻と各位置における値を定める。

【リンク】
pdf 古典力学 (解析力学)
東京大学数理物理学班「古典力学」
「高校物理の目次」


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