「高校物理の発想の基本」
高校物理の電磁気で、以下の図のように、「磁場の中を運動する導線に誘導起電力が発生する」という現象を教わります。
この法則の磁場の方向と運動の方向と誘導起電力の方向の関係をおぼえなければなりませんが、以下のように、この現象の本質を良く知ると、この現象を覚えやすくなります。
まず、導線を動かさないで、磁場の方を導線に対して動かしたら誘導起電力が発生するか?という疑問がわくと思います。
事実は、その通りに、下図のように、運動する磁場によって誘導起電力が生じます。
しかも、誘導起電力を生じるのは運動する磁場なので、そこに導線が無くても誘導起電力を生じます。
単位長さあたりの起電力が生じるということは、局所的な誘導電場Eによって電荷が動き、電流が生じることを意味します。
実は、最初の図で、運動するのが導体で無くて絶縁体であっても、その運動する絶縁体に局所的誘導電場Eが加わります。
誘導起電力の原因は、磁場と物体の相対運動により局所的誘導電場Eが生じることにあります。その局所的な誘導電場Eによって電荷が動き、電流が生じます。
局所的な誘導電場E(V/m)により電荷が移動する方向(誘導電場Eの方向と同じ方向)をx方向にし、磁場Hの方向をy方向にして、磁場の運動する速度vの方向がz方向であると覚えれば、誘導起電力Eが電流を流す方向と磁場Hと運動速度vの関係がおぼえられます。
(注意)
誘導起電力の発生する方向は間違えやすいので、注意する必要があります。
上図のように、誘導起電力の局所的誘導電場Eが図の上向きに発生するので、単位電荷が上向きに移動されられて電流が発生します。その局所的誘導電場Eは下から上を向くので、その空間の下側の電圧が高くて、上側の電圧が低いです。
それでは、金属棒の上端から下端に向けて発生する誘導電圧はプラスの電圧になるでしょうか。空間の局所的誘導電場Eの上側の電圧が下側よりも低かったので、マイナスの電圧になる?
この答えは、金属棒の上端がプラスの電圧が金属棒から出るというのが正解です。
それでは、空間の局所的誘導電圧がそれと逆というのはどういうことでしょうか。事実、この空間に金属棒のかわりに絶縁体をおいたら、たしかに、下側がプラスで上側がマイナスの誘導電圧Eが絶縁体に加わるのです。
この矛盾の原因は、金属が絶縁体とはちがって、電荷が移動できることにあります。
磁場Hの中の金属は、磁場Hが発生する局所的誘導電場Eによって、電荷を移動させられて、プラスの電荷を上に集め、マイナスの電荷を下に集めます。そうして電荷のかたよりを生じたら、その電荷が上から下に向けて電場を発生するので、その電場が、空間から加えられた局所的な誘導電場Eを打ち消して、金属内では、どの部分も同じ電位になります。
磁場Hの中の金属には電圧があらわれていないのです。
金属が外に出す電圧は、金属が磁場Hの外に出たところで発生します。もっとも、電圧が発生すると言うよりは、金属内の電位差(電圧)を0にしていた一方の当事者であった空間の誘導電圧が、磁場Hの領域の外側で消えるので、金属の電荷のかたよりが生じていた電圧だけがあらわれます。
そのように、金属は誘導電圧に逆らった電圧を外に出すので、金属が磁場Hの存在領域の外で出す電圧(誘導された電圧とも言う)は誘導電圧とプラスマイナスが逆になります。
(注意2)
磁場Hの存在する領域内では、電圧の測定点が属する運動座標系の運動速度が異なると、電圧の大きさが異なることに注意する必要があります。
(磁場Hが存在しない領域では、運動座標系でも静止座標系でも電圧が同じ)
磁場H中の金属といっしょに運動する運動座標系において、金属の2点間の電圧を測ったら、0になります。
しかし、金属といっしょには運動しない静止座標系に測定点が固定されている(測定点は金属といっしょには運動しない)電圧計で、その金属上を測定点を移動させながら、金属の2点間の電圧を測定したら、その測定電圧は0ではありません。その理由は、磁場H中を運動する金属には電荷のかたよりがあり、静止座標系に固定された電圧計は、その電荷のかたよりが生じる電圧を測るからです。
この「電圧」の測定の解釈において、「電圧計の測定用リード線にも電圧が誘導するのだから、真の電圧は、運動する電圧計ではなく静止する電圧計で測定したい」と考える人がいるかもしれません。しかし、電圧計のリード線が静止して見える運動座標系から見たら、電圧計のリード線は運動していないので、それには電圧が誘導していないと言えます。「静止している」という状態は、特定の運動座標系を基準にして静止しているのであって、異なる運動座標系から見たら、それは静止していないからです。
【リンク】
「高校物理の目次」
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