2013年2月21日木曜日

2巻きの超伝導コイルの導線に働く力

 

【問】
 下図のように、2巻きの超伝導コイルに電流が流れていない状態で、磁石を近づけて、磁石による外部磁場の磁束ΔΦをコイルのループ内に侵入させた場合を考えます。

 その2巻きのコイルの導線の間隔(線の中心間の距離)の最大値がdとします。
 このとき、超伝導コイルは電流Iを流して、結局は、コイルを横切る磁束が元通りの0になるようにします。
 そのときに、コイルの2本の導線の間隔がdの位置における、コイル自身の電流による、コイルの導線に単位長さあたりに働く力Fを計算しなさい。

 ただし、この2巻きの超伝導コイルの自己インダクタンスはLとし、導線間隔dはコイルの半径rに比べて十分短い距離であるものとします。
d≪r
(注意)コイルのインダクタンスLは、コイルの巻き数が2程度で小さい場合は、コイルの導線の太さが小さいほど大きくなり、導線の太さによってインダクタンスLが変わります。

【解答】
 この2巻きコイルを横から観察すると、下図のように見えます。

 N巻きのコイルを横切る(コイルの外部からの)磁束Φが、Δtの時間でΔΦ変化すると、N巻きのコイルには誘導起電力E[ボルト]の電圧が
E=-NΔΦ/Δt (式1)
発生します。
(注意)誘導起電力の計算では、コイル自身の電流Iにより発生する磁束は計算に入れない。外部からの磁束のみで計算します。

 この誘導起電力に応じて、以下の式による電流Iの変化ΔIを生じます。
E=-L(ΔI/Δt) (式2)
 式1と式2から、
E=-NΔΦ/Δt=-L(ΔI/Δt)
NΔΦ=L・ΔI
∴ ΔI=NΔΦ/L
 この超伝導コイルには、最初は電流I=0でしたので、
I=ΔI=NΔΦ/L (式3)
です。
 この電流Iによって、コイルの各導線が磁場Hを発生しています。
 コイルの導線の電流Iの近くでは、直線の導線の電流Iが発生する磁場と同じく、
H=I/(2πd)
の磁場を発生しています。
 そのため、コイルの1本の線の電流Iの流れる線が単位長さあたりに、距離d離れて平行するコイルのもう1本の線の電流Iから受ける引力Fは、以下のように計算できます。

この大きさで、コイルのもう一方の導線に引きつけられる力が働きます。
(注意)コイル全体の電流からの力も働きますが、その力は、以下のように、対向して隣接する導線からの力に比べると十分に小さいので無視しました。つまり、遠方のコイルの電流からは、コイルの導線の電流Iの単位長さあたりにμ・I・(2・I/(2r))程度の力が加わります。
(1/r)≪(1/d)なので、その力は、対向して隣接する導線からの力に比べて十分小さいので無視しました。
(解答おわり)

(補足)
 以上の解答で計算した力Fは、dが小さくなればなるほど、(1/d)にほぼ比例して大きくなります。
 その理由は、後に大学で教わることですが、dが小さくなるときの、そのdよりも細い導線を使うべきこのコイルの(導線を細くすることによる)Lの増え方はdの減り方に比べると緩やかなので、結局、dLはdが小さくなるとdと一緒にどこまでも小さい値になります。
 そのため、外部磁場からこのコイルに加わる力もあり得ますが、以上の解答で計算した力Fは、dが十分小さければ、その力も上回ります。d≪rの条件によって、その条件もほぼ満足しています。

【リンク】
「高校物理の目次」


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