「高校物理の発想の基本」
ケプラーの「面積速度一定の法則」を高校の物理で教わったと思います。
その法則は、もっと汎用化した、「角運動量保存の法則」という法則の一部です。
(角運動量保存の法則とは、回転している物体系に外から、回転モーメント=(腕の方向に垂直な力)×(腕の長さ)が加わらなければ、角運動量=(腕の方向に垂直な運動量)×(腕の長さ)が変わらない、という法則です)
この、「角運動量保存の法則」は、「運動量保存の法則」と同じくらいに大切な法則ですが、高校物理では教わりません。
大学の物理の入試問題の中には、深い物理現象の理解の程度を試験する問題もありますが、基本的な物理現象の角運動量保存の法則を知って、はじめて、深い物理現象の理解が進むと考えます。
そのため、「角運動量保存の法則」=「面積速度(角運動量を質量で割り算した値)一定の法則」が物理での保存法則の1つであることを頭において問題を解く練習として、以下の問題を解きます。
【問題】
上図のように、水平面上で回転中心Oのまわりに回転する軽いレールに、レールをローラーはさんで固定した重い物体Mが、回転中心Oから距離r0の位置で、レールの軸に垂直方向に速度v0で運動して、回転中心のまわりを回転しています。この物体Mがローラーでレールをゆっくりとたぐりよせて、回転中心Oから距離r1の位置までゆっくり上って来たとき、物体は、レールの軸に垂直方向に速度v1で運動するものとします。この速度v1を計算しなさい。
【解答】
面積速度一定の法則から、
v0×r0=v1×r1
の関係が成り立って、回転中心Oに物体Mが近づけば、物体の速度vは速くなるはずです。
その知識は、以下のように仮定して計算する事を正当化します。
物体Mがローラーでレールをゆっくりとたぐりよせて、回転中心Oから距離r1の位置までゆっくり上ると、物体は、遠心力に逆らって上っていくので全体系にエネルギーを与えます。そのため、全体系のエネルギーが大きくなります。
これが、重力場の中を上に上がる場合だっらなら、重力場が位置エネルギーを蓄えて全体系のエネルギーが増します。
しかし、この問題の系の遠心力は場の力では無く、物体Mが運動することにより生じたみかけの力です。エネルギーは物体Mの運動エネルギーしかありません。そのため、全体系のエネルギーが増せば、物体Mの速度が速くなって運動エネルギーが増すことになると仮定しても良いと考えられます。
そのため、そのように仮定して、以下の式1が成り立つと考えます。
この式を距離rで微分すると、以下の式2が得られます。そして、順次に計算して式3が得られます。
この式3は、次の式4の形の角運動量保存の法則を満足していますので、先の仮定は正しかったと言えます。
ちなみに、式5が答えです。
以上のように仮定することは、わからないことは、とりあえず仮定して考える物理学的発想で物理現象を深く理解しようとする努力の形です。一方、角運動量保存の法則は、それよりも確固とした確立された法則です。そのため、この答えの正しさが、角運動量保存の法則によって保障されます。角運動量保存の法則は、この問題の答えそのものです。
この問題は、角運動量保存の法則を用いて解くのが正解であるとも言えます。しかし、高校物理では、角運動量保存の法則を教わりませんので、上の計算のような解答がゆるされると考えます。
(補足)
この例題は、運動方向におおむね垂直な方向に力を加えて、その結果、物体の運動の速度が変わるという例です。
この結果は、ちょっと見ると、「ベクトルに垂直方向にベクトルを加える場合、ベクトルの方向が変わるがベクトルの大きさは変わらない」という定理と異なる結果になったように見えます。しかし、そうではありません。この例では、運動の方向は力の方向に垂直な方向からわずかにずれた運動が行なわれています。そのわずかなずれが積み重なって、速度の変化をもたらしたのです。
運動の方向が力の方向に厳密に垂直であるならば、速度の大きさは変化しません。
また、物体の位置が力の方向へは全く動かないならば、運動の方向は、力の方向に厳密に垂直であると言えます。
【リンク】
「高校物理の目次」
ケプラーの「面積速度一定の法則」を高校の物理で教わったと思います。
その法則は、もっと汎用化した、「角運動量保存の法則」という法則の一部です。
(角運動量保存の法則とは、回転している物体系に外から、回転モーメント=(腕の方向に垂直な力)×(腕の長さ)が加わらなければ、角運動量=(腕の方向に垂直な運動量)×(腕の長さ)が変わらない、という法則です)
この、「角運動量保存の法則」は、「運動量保存の法則」と同じくらいに大切な法則ですが、高校物理では教わりません。
大学の物理の入試問題の中には、深い物理現象の理解の程度を試験する問題もありますが、基本的な物理現象の角運動量保存の法則を知って、はじめて、深い物理現象の理解が進むと考えます。
そのため、「角運動量保存の法則」=「面積速度(角運動量を質量で割り算した値)一定の法則」が物理での保存法則の1つであることを頭において問題を解く練習として、以下の問題を解きます。
【問題】
上図のように、水平面上で回転中心Oのまわりに回転する軽いレールに、レールをローラーはさんで固定した重い物体Mが、回転中心Oから距離r0の位置で、レールの軸に垂直方向に速度v0で運動して、回転中心のまわりを回転しています。この物体Mがローラーでレールをゆっくりとたぐりよせて、回転中心Oから距離r1の位置までゆっくり上って来たとき、物体は、レールの軸に垂直方向に速度v1で運動するものとします。この速度v1を計算しなさい。
【解答】
面積速度一定の法則から、
v0×r0=v1×r1
の関係が成り立って、回転中心Oに物体Mが近づけば、物体の速度vは速くなるはずです。
その知識は、以下のように仮定して計算する事を正当化します。
物体Mがローラーでレールをゆっくりとたぐりよせて、回転中心Oから距離r1の位置までゆっくり上ると、物体は、遠心力に逆らって上っていくので全体系にエネルギーを与えます。そのため、全体系のエネルギーが大きくなります。
これが、重力場の中を上に上がる場合だっらなら、重力場が位置エネルギーを蓄えて全体系のエネルギーが増します。
しかし、この問題の系の遠心力は場の力では無く、物体Mが運動することにより生じたみかけの力です。エネルギーは物体Mの運動エネルギーしかありません。そのため、全体系のエネルギーが増せば、物体Mの速度が速くなって運動エネルギーが増すことになると仮定しても良いと考えられます。
そのため、そのように仮定して、以下の式1が成り立つと考えます。
この式を距離rで微分すると、以下の式2が得られます。そして、順次に計算して式3が得られます。
この式3は、次の式4の形の角運動量保存の法則を満足していますので、先の仮定は正しかったと言えます。
ちなみに、式5が答えです。
以上のように仮定することは、わからないことは、とりあえず仮定して考える物理学的発想で物理現象を深く理解しようとする努力の形です。一方、角運動量保存の法則は、それよりも確固とした確立された法則です。そのため、この答えの正しさが、角運動量保存の法則によって保障されます。角運動量保存の法則は、この問題の答えそのものです。
この問題は、角運動量保存の法則を用いて解くのが正解であるとも言えます。しかし、高校物理では、角運動量保存の法則を教わりませんので、上の計算のような解答がゆるされると考えます。
(補足)
この例題は、運動方向におおむね垂直な方向に力を加えて、その結果、物体の運動の速度が変わるという例です。
この結果は、ちょっと見ると、「ベクトルに垂直方向にベクトルを加える場合、ベクトルの方向が変わるがベクトルの大きさは変わらない」という定理と異なる結果になったように見えます。しかし、そうではありません。この例では、運動の方向は力の方向に垂直な方向からわずかにずれた運動が行なわれています。そのわずかなずれが積み重なって、速度の変化をもたらしたのです。
運動の方向が力の方向に厳密に垂直であるならば、速度の大きさは変化しません。
また、物体の位置が力の方向へは全く動かないならば、運動の方向は、力の方向に厳密に垂直であると言えます。
【リンク】
「高校物理の目次」
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